6月28日、午後3時東京地裁において、私たちにとって画期的な判決が下りました。
私たちの仲間の故池内甚一郎さんに対するアスベスト救済法による労災遺族給付を認める判決です。アスベスト被害が増大する中。この判決は大きな一歩です
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勝利判決を受け、参加者全員でバンザイ |
2006年6月、足立労基署に労災申請をしてから6年目の6月28日(金)東京地裁において石綿救済法による労災遺族給付の認定を認める画期的な判決が下りました。
アスベストの被害者を隙間なく救済するとした「石綿救済法」だが、実際の適用とするためには、医学的な証拠をこちらが用意しなければならない。「石綿救済法」では5年以上さかのぼっても救済することになっているが、医療機関におけるカルテ等の保存期間は5年。多くの医療機関が5年を過ぎると破棄しているという現状の中で、今回、一緒に働いていた仲間の状態でアスベスト被害を推認し、適用を認めるという画期的な判決を勝ち取ったことは、今後のアスベスト救済に大きな布石となるでしょう
勝利報告集会開催
6月28日午後8時より支部事務所において勝利報告集会が約50人で催された。
最初に松館書記より経過報告。北千住法律事務所の鎌田弁護士、橋澤弁護士からの報告と藤井芝病院院長から笑いをまじえての報告がありました。
橋本副委員長の乾杯。中村書記長、平井本部労対部長、針谷区議、渡辺アスベスト被害者の会会長代行からお祝いを受け、最後に池内康子さんと家族からお礼の言葉を受け、散会となりました。
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医師・弁護士と家族に囲まれて勝利の報告 |
仲間に感謝 池内 康子さん
今日このような判決を受け、大変うれしく思います。
これも主人の膨大な資料から先生方が苦労していろんな資料を駆使してくださったおかげです。
私だけでは何も出来ませんでしたが、いろんな不安な中、ずっと寄り添ってくれた岩崎職員には大変感謝しています。
声明
1 本日、東京地方裁判所(古久保正人裁判長)は、約43年間建築現場で働いた亡池内甚一郎が肺がんで死亡したのはアスベスト(石綿)の曝露が原因として、妻の池内康子が遺族補償を不支給とした足立労働基準監督署の処分取消しを求めた訴訟で、原告の請求を認め、処分取消しの判決を言い渡しました。
2 亡甚一郎は、昭和30年から大工として働き、平成11年2月に肺がんと診断され、同年10月に死亡しました。妻の池内康子は、平成18年6月、足立労働基準監督署に対し、特別遺族年金の支給を請求しましたが、石綿肺・胸膜プラークの医学的知見がないと いうことで斥けられ、審査請求も再審査請求も斥けられ、平成21年10月提訴したものです。
3 判決は、亡甚一郎と同じ建設作業現場で大工として長期間に亘って働いていた同僚2名に明確な胸膜プラークの所見がみられることから、亡甚一郎にも胸膜プラークが存在する可能性を認め、肺がんの認定基準に準じる評価を行ない業務起因性を認めました。
更に、同僚2名の胸膜プラークの所見とばく露歴から、同僚2名は、肺がん発症の相対的危険度を2倍以上となるばく露を受けたと推認され、亡甚一郎の受けた累積ばく露量はそれを上廻ると推認され、業務起因性が認められるとしました。
4 本件は、平成18年3月に制定された石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済法)に基づいて請求したものです。
石綿救済法は、すき間のない救済を立法趣旨とし、遺族からの請求が時効になっているものも救済の対象としました。本件も、石綿救済法により請求が可能になりましたが、年月の経過により、レントゲン画像・CT画像ともに廃棄され残っていませんでした。
そのため、医学的知見の立証が困難でしたが、判決は、本人の画像のないなかで、同僚2名の胸膜プラークの所見の存在を重視し、医学的知見と石綿ばく露量の両面から業務起因性を認定したもので、画期的な司法判断です。
5 石綿救済法による労災請求では、医学的資料が残っていなかったり乏しかったりする事案が多く、これに対し、国は、認定行政において、医学的知見の存在を厳しく求めてくるため、認定件数は非常に少ない実情となっています。
すき間のない救済という立法趣旨にたちかえり、被害者救済の視点に立って、認定行政を行なうことが強く求められます。
6 アスベスト疾患で仕事を絶たれ又は大黒柱を失い困窮する家族が今なお多く残されています。足立支部はこの勝利を確信に、被害者すべての救済と医師や患者と共に治療、生活援護、医療機関の整備に全力ですすめていきます。
2012年6月28日
東京土建一般労働組合足立支部
東京土建足立支部アスベスト被害者の会
アスベスト池内裁判弁護団