東京土建一般労働組合　足立支部

　福島県白河市表郷村生まれの緑川茂男さん。「田園地帯というとかっこいいけど、田圃ばっかり」で、家は農業。現在でも一歳年上の長男が農業を継いでいるという。子どもの頃は雪が多く、父親は冬になると出稼ぎに出ていた。
　その頃は子どもが多く第１から第５小学校まであり、緑川さんが通った小学校は山の上。集団登校で６キロの道のりを歩いた。学校の石炭ストーブで、お弁当を周りに置いて温めて食べた思い出がすぐ浮かんだ。現在では子どもが少なくなり、統合され１校のみと。
　５人兄弟で、一番上と一番下が女で、男３兄弟の真ん中。　小学校の頃は、午後学校から帰ると田んぼの水引きが仕事で、中学になる頃には「田植え」「稲刈り」に駆り出されるのが常だった。
　父親は酔っ払うと戦争中の話（ビルマ戦線）をよくしていたが、「酔っ払いのくどさもあったので、何を話していたか覚えていない」という。

　「自分は高校に行っていないんだよね」と、中卒で集団就職した時の事を語るが、緑川さんには栃木県にあるブリヂストンタイヤに就職して、タイヤ作りをしたかったという思いがあった。その語り口から“今でも心残り”という感情が浮かびあがる。
　しかし親の指示は、伯父の息子さんが経営する左官屋勤めで、「言う事を聞くしかなかった」。
　左官・浪花組の一次下請けの事業所だったが、現場ごとに飯場生活。風呂に入ると刺青をした先輩たちがいて、目も合わせられず「大変なところに来てしまった」と。現場の経験を積むごとに賃金は上がっていくが、「仕事は辛かったね」。野丁場の仕事で50年。現在は、電通・ＮＨＫ・トヨタなどの改修工事の仕事に入っているという。故郷は「家族の暖かみを感じる場所だよね」

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